反復投与全身毒性試験(亜急性/亜慢性/慢性)とは
反復投与による全身毒性試験は、医療機器あるいはその原材料を中長期 (亜急性、亜慢性または慢性) にわたり連続あるいは繰り返して使用した場合の全身毒性を評価する試験です。
医療機器から抽出した抽出液中に亜急性 (亜慢性) 全身毒性を有する物質が存在しないことを確認するため、抽出液を反復して投与する試験を行います。
ラットあるいはウサギに被験物質の埋植が可能で、想定される医療機器の適用経路としても埋植が適切であり、一定の安全係数を担保できる場合、埋植試験の観察項目を追加することで、埋植試験と一体化させて全身毒性を評価することも可能です。
試験方法
医療機器ガイダンスでは、亜急性 (亜慢性) 全身毒性試験は、生理食塩液抽出液を試験液として1日1回の静脈内投与を繰り返すことにより試験を行います。
投与液量は体重1kgあたり20mLとします。この試験は検査項目数が多いため、採血できる量が多いラットを使用します。
1群あたりの最小動物数は医療機器ガイダンスで決められています。
投与期間も医療機器ガイダンスに記載されており、亜急性全身毒性試験では一般的に14~28日間ですが、静脈内投与の場合では24時間より長く14日間より短い期間と記載されています。
また、亜慢性全身毒性試験では一般的にげっ歯類では90日間、他の動物種では寿命の10%を超えない期間ですが、静脈内投与の場合では14~28日間と記載されています。
試験期間を通して毎日一般状態を観察するほか、適切な間隔(週1回以上)で体重の測定および摂取した餌の量を測定します。また、投与期間終了時に血液学検査、血液生化学検査、解剖時の各器官の肉眼的検査、器官重量測定および組織切片の病理組織学検査等を実施します 。
げっ歯類 | 非げっ歯類 | |
---|---|---|
急性全身毒性試験a | 5 | 3 |
亜急性全身毒性試験 | 10(雌雄各 5)a | 6(雌雄各 3)a |
亜慢性全身毒性試験 | 20(雌雄各 5)a | 8(雌雄各 4)a |
慢性全身毒性試験 | 30(雌雄各 15)b,c | c |
a:雌雄いずれかの性で試験を実施してもよい。その医療機器がいずれかの性に臨床使用されるものならば、試験はその性の動物で実施するのがよい。
b:一つの用量群で構成される試験において推奨される動物数。過剰投与の用量群を追加する場合には、各用量群当たり雌雄各10匹まで減らしてもよい。
c:試験動物数は、その試験が意義あるデータを提供するための必要最低限の数とする。動物評価期間の終了時に、試験結果の統計学的評価に充分な数の動物が残るよう設定しなければならない。
判定方法および基準
得られた検査結果を対照液投与群との間で比較して毒性を評価します。
具体的には、対照液投与群と試験液投与群との間で統計学的な有意差検定を行いますが、最終的にはそれらの統計学的検定結果と各検査項目の背景値に基づき毒性の有無を判断する必要があります。
また、化学物質や医薬品における反復投与毒性試験のように、医療機器の抽出液についても用量段階を設けた試験を行うことは、より正確な安全性の確認ならびに試験結果の解釈を確実にすることに効果があります。