全身毒性試験の目的
フグ毒のようないわゆる強い毒物を摂取した場合は勿論ですが、食塩のような生体に必須の物質でも、一度に大量に摂取すると生体は急性反応を起こし、著しい場合には死に至ることもあります。
また、ヒ素中毒等で知られるように、たとえ少量であっても長期 (慢性的) に摂取した場合には、様々な障害を引き起こすことがあります。
このように、生体に曝露される物質の種類や量あるいは曝露期間によってその毒性反応は異なりますが、曝露物質に対する生体内の反応、すなわち、体内に吸収された物質の希釈・排泄効率や、組織における蓄積性、生化学的な解毒作用など、吸収された物質と生体との相互作用によってもその毒性発現の内容や程度が異なります。
全身毒性試験は、医療機器またはその原材料が、生体に対して急性あるいは慢性の毒性作用を引き起こす可能性があるか否かを総合的に判断するための試験です。
全身毒性試験の概要
毒性物質の曝露形態は、一度に大量に曝露される場合から、一生涯あるいは母体内もしくは乳汁を通じて世代を超えて継続的に曝露される場合などさまざまです。
全身毒性試験は、被験物質の投与期間によって急性全身毒性試験 (1回投与)、亜急性全身毒性試験 (通常、14~28日間の反復投与)、亜慢性全身毒性試験 (通常、90日間の反復投与) および慢性全身毒性試験 (通常、6~12ヶ月間の反復投与) に分けられ、試験目的あるいは医療機器の使用条件等を考慮して実施する試験を選択する必要があります。
食品薬品安全センターの全身毒性試験について
反復投与による全身毒性試験は細胞毒性や刺激性試験などのように判定基準が設定されておりません。
一般状態、体重測定、血液検査、病理学検査結果など、多数のデータを総合的に判断し、全身毒性の有無を評価する必要があります。
食品薬品安全センターでは日本毒性学会の認定トキシコロジストが試験報告書を作成(又は監修)いたします。
医療機器に特有の全身毒性試験として、二重投与経路による亜慢性毒性試験法があります(ISO 10993-11:2017, Annex H)。
極性と非極性の2種類の溶媒で調製した抽出液を同一動物に投与し全身毒性を評価する試験で、極性溶媒は静脈内投与し、非極性溶媒は腹腔内投与いたします。
当センターでは本試験を受託しております。