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皮膚感作性試験

皮膚感作性試験

皮膚感作性試験の目的

皮膚感作性試験の目的

医療機器等からの溶出物や原材料によって、遅延型アレルギー反応の感作が引き起こされることがあります。

アレルギーの原因物質によって急性の免疫応答が誘導された状態を感作 (Sensitization) と言います。

感作状態にある個体が再びその原因物質に接すると、アレルギー症状が誘発 (Elicitationまたは惹起とも言う) されやすくなります。

感作性試験は、急性の免疫応答や誘発時のアレルギー「症状」を指標として、医療機器からの溶出物や原材料の感作性を予測評価することを目的としています。

皮膚感作性試験の概要

皮膚感作性試験の概要

感作性試験は、すべての医療機器に必須の試験とされています。

感作性試験は、アレルギー「症状」 (紅斑、浮腫) の有無や程度を調べるGuinea Pig Maximization Test (GPMT)、Adjuvant and Patch Test (A&P)、Buehler Test (BT) と、感作時の免疫応答を調べるLocal Lymph Node Assay (LLNA) とに大別されます。

なお、いくつかのin vitro感作性試験法がOECD TGに掲載されていますが、現在、医療機器評価への適用は推奨されていません。

医療機器の感作性試験は日米欧ともにISO 10993-10を基にしますが、ISO 10993-10、医療機器ガイダンスおよびFDA Guidanceのそれぞれで記載が一部異なります。

ISO 10993-10では、LLNA、GPMTおよびBTが紹介されています。

これらのうち動物福祉の点からLLNAを第1選択とすることが推奨されています。

直接適用できない試験試料は、ISO 10993-12に従って、極性溶媒 (生理食塩液等) と非極性溶媒 (植物油等) で抽出液を調製します。

試験試料がポリマー樹脂の場合、参考情報としてISO 10993-10 Annex Eに有機溶媒を用いて抽出液を作製する方法が記載されています。

医療機器ガイダンスでは、GPMT、A&Pおよび LLNAが紹介されています。これらの試験法 は適切な試験条件を設定すれば同等の感度とみなされるため、どの試験法もリスク評価に用いることができます。

そのため、各試験法の特徴を踏まえた上で試験試料の新規性、臨床使用方法、物性などを十分考慮して試験法を選択することになります。

また、ポリマー樹脂からの試験試料作製は、アセトン、メタノール等の有機溶媒の中から、抽出率の最も高い溶媒で抽出物を作製する方法が推奨されています。

なお、単回かつ一時的接触で新規原材料を使用していない機器あるいはリスクの低い医療機器の場合は、前述のISO 10993-12に従い、極性および非極性溶媒による抽出液を用いた試験でのリスク評価も可能とされています。

FDA Guidanceでは、GPMT、LLNAおよびBTが紹介されています。このうち、BTは表皮接触機器の場合のみ実施することができます。また、新規原材料から作られた機器や、皮膚に浸透しないが深部組織や損傷表面と接触する機器に使用される物質はGPMTでの実施を推奨しています。抽出液の作製はISOガイダンスに従います。

食品薬品安全センターの皮膚感作性試験について

感作性は一度発症すると治癒することが難しい障害の1つです。

医療機器の特性やリスクの大きさに応じた適切な試験方法をご提案いたします。

また、申請先(国内、米国、欧州等)や試験の目的に合わせ各種ガイダンスに対応した試験を実施することが可能です。

食品薬品安全センターの皮膚感作性試験について

Guinea Pig Maximization Test (GPMT)

GPMTは感作性試験法として確立され、世界で広く用いられている方法です。モルモットを用いるこの方法は、感作増強剤としてフロイントの完全アジュバント (FCA) を用いるため感度が高いこと、背景データが豊富なため比較検討しやすいことが長所として挙げられます。

一方、皮膚の紅斑の程度を判定基準に用いているため、色素など皮膚を着色する物質の評価が難しいことや、皮内投与に使用可能な媒体に制限があり、適切な媒体の選択が困難なこともあります。

皮膚感作性試験:食品薬品安全センターにおけるGPMTの試験スケジュール例
食品薬品安全センターにおけるGPMTの試験スケジュール例

Adjuvant and Patch Test (A&P)

A&P (別名Scratched skin test) とは、モルモットを用いる感作性試験法の一つです。皮内投与が困難な試験試料について、皮内投与の代わりに試験試料を貼付して感作を行う方法で、FCAを用いるため感度の高い試験です。

また、医療機器の臨床使用方法が貼付の場合には、GPMTに優先して実施されることがあります。

一方、貼付する試験試料の粒子サイズや形状による刺激性が結果に影響することがあります。

皮膚感作性試験:食品薬品安全センターにおけるA&Pの試験スケジュール例
食品薬品安全センターにおけるA&Pの試験スケジュール例

Local Lymph Node Assay (LLNA)

LLNAは、モルモットを用いる感作性試験の代替法として開発された試験法で、試験試料をマウスの耳介に塗布する試験法です。

LLNAの特徴は、誘発時の皮膚反応すなわち最終的なアレルギー症状を指標とするのではなく、感作成立時のリンパ球の増殖活性を指標とする点にあります。

これにより、GPMTに比べて試験期間の短縮などによる低コスト化とリンパ球の増殖活性を放射活性等の測定値で評価することによる試験結果の定量化が長所として挙げられます。

また、FCAの投与による炎症や閉塞貼付による拘束ストレスがないことから、動物への負荷がGPMTやA&Pに比べて少なく、動物福祉の点で推奨されています。

一方、刺激性によって偽陽性を示す可能性があること、ある種の金属や皮膚に浸透しない高分子化合物など評価が困難なものもあること、耳介に十分展着する媒体を選択する必要があるなどの短所があります。

LLNAでは、CBA/JもしくはCBA/CA系マウスの耳介に試験液 (医療機器の場合は機器の抽出物の調製液または濃縮抽出液) を3日間連続塗布して感作を誘導します。

最終塗布の3日後にトレーサーである3H-thymidineを尾静脈内投与し、その5時間後に耳介リンパ節を摘出して放射活性を測定します。

増殖している細胞はDNA合成のため3H-thymidineを細胞内に取り込むので、耳介リンパ節中に取り込まれた3H-放射活性を測定することにより、リンパ球の増殖活性を調べることが出来ます。

LLNAでは通常、媒体対照群、被験物質投与群、陽性対照群を設定し、媒体対照群の放射活性に対する被験物質投与群の放射活性の比 (Stimulation Index) を求め、Stimulation Indexが3以上の場合に感作性ありと判断します。

皮膚感作性試験:食品薬品安全センターにおけるLLNAの試験スケジュール例
食品薬品安全センターにおけるLLNAの試験スケジュール例