小核試験(in vivo)とは
小核試験(in vivo)は、医療機器からの溶出物や化学物質による染色体異常誘発作用の有無をげっ歯類動物 (マウスまたはラット) を用いて調べる試験で、染色体異常に起因して生じる小核を指標とします。
細菌あるいは培養細胞を用いるin vitro試験で明確な陽性あるいは陽性が疑われる結果が得られた医療機器については、フォローアップ評価を行う必要があります。
フォローアップ評価では、医療機器からの溶出物が遺伝毒性物質であるか否かを判断し、遺伝毒性物質と判断される場合は、さらに懸念すべき遺伝毒性リスクが臨床使用条件下で生じるか否かを評価します。
もし、in vitro試験で患者へのリスクが示唆される場合で、かつ遺伝毒性ハザードを想定したリスク管理ができないと判断される場合には、生体内 (in vivo) における遺伝毒性作用を調べる必要があります。
小核試験(in vivo)は、フォローアップ評価において実施されるin vivo遺伝毒性試験の代表的な試験です。
試験方法
小核試験(in vivo)は、染色体切断によって生じた染色体断片 (構造異常由来) や細胞分裂異常により取り残された染色体 (異数性由来) を小核として検出しますので、基本的には細胞分裂が盛んな組織が試験の対象となります。
臨床適用箇所が皮膚となる薬剤または医療機器など、局所曝露の影響を調べる必要がある場合には、皮膚 (表皮細胞) を対象とする皮膚小核試験を実施することも可能です。
また、化学物質および太陽光による複合曝露の影響を生体内で調べる場合には、光皮膚小核試験を実施することも可能です。医療機器の安全性評価では通常、骨髄や末梢血を対象として小核試験(in vivo)を実施します。
骨髄や末梢血を対象とした小核試験(in vivo)では、試験の実施を制限/中止するような毒性が認められない最大投与量(最大耐量) を調べる毒性予備試験を最初に行います。文献や利用可能な他試験の結果などから最大耐量に関する情報が得られる場合は、毒性予備試験を省略します。
その後、毒性予備試験の結果などに基づいて決定した性 (毒性に明らかな性差が無い場合は雄性) および投与群[通常、高用量群 (最大耐量)、中用量群 (高用量の1/2) および低用量群 (高用量の1/4) の3用量群]を用いて小核本試験を行います。小核本試験では、各個体から骨髄あるいは末梢血を得てスライドグラス標本を作製します。
小核を有する細胞
骨髄塗抹標本の作製法
判定方法および基準
スライドグラス標本はアクリジンオレンジで染色したのち蛍光顕微鏡下で観察し、小核を有する幼若赤血球数を計測して被験物質の骨髄細胞における小核出現頻度を調べます。また、全赤血球中に占める幼若赤血球の比率も同時に計測し、被験物質の骨髄細胞に対する増殖抑制の有無を調べます。