遺伝毒性試験の目的
遺伝毒性試験の目的は、直接的あるいは間接的に遺伝的な傷害を引き起こす物質 (遺伝毒性物質)を検出することです。
遺伝毒性物質によるDNA傷害作用によって、細胞内のDNAが損傷を受け、そのDNA初期損傷が正常に修復されないままDNA複製や細胞分裂の過程が進行した場合には、遺伝子突然変異や染色体異常などの遺伝的変異が発生します。また、その遺伝的変異は細胞分裂のたびに娘細胞に受け継がれることになります。
従って、遺伝的変異が精子や卵子などの生殖細胞に生じた場合には、流産や先天異常を引き起こす可能性があります。また、身体を構成している細胞(体細胞) に遺伝的変異が生じた場合には、がんの原因となる可能性があります。
遺伝毒性試験の概要
遺伝毒性試験は、細菌やほ乳類細胞を用いるin vitro試験と、げっ歯類動物を用いるin vivo試験に分類されます。遺伝毒性の評価は、DNA初期損傷、遺伝子突然変異や染色体異常などを指標とする試験を組み合わせて総合的に行うことが推奨されています。
医療機器ガイダンスでは、「細菌を用いる復帰突然変異試験」と「ほ乳動物培養細胞を用いる試験」(染色体異常試験、小核試験またはマウスリンフォーマTK試験)の、2種のin vitro試験の組み合わせを基本としています。ISO 10993-3では、これらのin vitro試験で陰性と判断できない場合のフォローアップ評価について記載されています。
フォローアップ評価では、医療機器から溶出した化合物が、臨床使用条件下で懸念される遺伝毒性のリスクを有するか否かを判断し、懸念される遺伝毒性のリスクを有すると判断された場合には、リスク管理を行うかフォローアップ試験を行い、その結果を踏まえてさらにリスク評価を行う必要があります。
このフォローアップ試験として、「トランスジェニック動物を用いる突然変異試験」や「げっ歯類動物を用いる小核試験」などのin vivo試験を実施する場合があり、生体内における遺伝子突然変異誘発性あるいは染色体異常誘発性の有無を調べます。
食品薬品安全センターの遺伝毒性試験について
復帰突然変異試験(Ames試験)、染色体異常試験、小核試験の他にumu試験、トランスジェニックマウス試験なども実施可能です。
当センターの遺伝毒性試験ではお客様の計画の手戻りリスクを低減するためにスクリーニング試験に注力しています。
遺伝毒性試験に関するISO委員等、専門家を擁するチームがご相談をお受けし、試験で陽性結果が得られた場合においても、原因調査のサポートやフォローアップ試験をご提案いたします。